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クライミングとは何か

「登る」ということ
 「なぜエベレストに登るのですか」
「山がそこにあるからさ」
ジョージ・マロリーが残した有名な言葉ですが、その意味のわからなさでも有名です。
要するに、山に登ることに「理由などない」ということなのでしょうか。
わからないものは仕方ないので、「山に登る理由は人それぞれ」とでもしておくほかはありません。「いい空気を吸うため」「自然と触れあうため」「身体をきたえるため」「自分を見つめ直すため」……いろいろあっていいのではないでしょうか。
ただ、そういった別の目的をもつのではなく、「登ることそのもの」を純粋に目的とするようなスタイルがあります。ここでは、そういうスタイルの登り方を「クライミング」ととらえて見ていきます。
 
ロッククライミング
 どんな登山にも、多かれ少なかれ困難さはあります。困難さがもっとも少ない登山は「山歩き」です。低い負荷で、自然や仲間との交流を楽しみます。
 しかし、「登ることそのものを目的とするクライミング」は、その対極にあります。もちろん、初心者と上級者とで程度にちがいはありますが、あえて困難を自らに課し、それを克服しながら登り切ることを「おもしろい」とするクライミングです。
 「ロッククライミング」こそ、まさしくそういうクライミングです。
 
ロッククライミングとは
 ロッククライミングは「岩壁登攀」、つまり「岩壁を登ること」です。
 広い意味では、アイガー北壁など、危険で困難な岩壁を登るもの(アルパイン・クライミング)も含まれます。
 ただ、そういう遭難リスクが高いものはごく一握りのプロ向け。ふつう、ロッククライミングといえば、もう少しハードルの低い岩登りを指します。1940年代にアメリカのヨセミテなどで始まったものが今日に至っています。そのため、ヨーロッパで発展したアルパイン・クライミングの用語にはドイツ語が多いのに対し、ロッククライミングの用語は英語が中心です。
 
ロッククライミングのいろいろ
 ロッククライミングは、さらにもう少し細かく分類されます。
 まず、「エイドクライミング」。「人工登攀」と訳され、ボルトやアブミ、ロープなど支点支持具を多用するものです。1960年頃までは、こちらが主流でした。
 しかし、岩にやたらとボルトを打ち込むと、そのルートは「楽勝」になってしまいます。つまりクライミングの「困難さ」がそこなわれ、したがって「おもしろさ」が失われてしまうわけです。
 そのような反省から生まれたのが、できるだけ道具を使わない「フリークライミング」でした。
 
フリークライミングのいろいろ
 フリークライミングにもいくつかのバリエーションがあります。
 まず、転落時の安全対策としてロープを用いるものに、「リードクライミング」と「トップロープクライミング」があります。両者とも、ロープの確保支点としてボルトや自然の割れ目にセットするナッツ、カミングデバイスなどを使いますが、転落時に命綱としてのロープを支持するためのもので、ロープに体重をあずけて登るためのものではありません。
 リードクライミングは、クライマー自身が登りながら支点支持具にロープをかけていき、その他端を崖下にいる人(ビレイヤー)がしっかり握って万が一にそなえるという、2人1組で行うスタイルです。
 トップロープクライミングは、岩壁の頂上(トップ)にしっかりした支点を確保し、これにロープをかけてクライマーにつなげて行います。
 そして、ロープも使わず、専用シューズと滑り止めチョークだけ用いる、もっともシンプルなスタイルが「ボルダリング」です。5m程度までの低い岩壁に登ります。「クラッシュパッド」と呼ばれるクッションを地面に敷くこともあります。
 
アウトドアからインドアへ
 1980年代になると、金属やプラスティック素材でできた人工物のグリップポイントを配置したフリークライミング向けの人工壁、「クライミングウォール」が現れます。競技会などでは屋外に置かれる場合もありますが、基本的には屋内に設置されるようになります。低い壁を登るボルダリングを中心に、クライミングの現場はアウトドアからインドアに移り変わりました。
 こうなると「自然と触れあう」という要素すらなくなります。これこそ本当に「登ることそのものを目的とするクライミング」ということになります。
 インドアのクライミングは、天候の影響を受けず、一日中どんな時間でもできます。また、グリップポイントの配置をさまざまに工夫することで、容易に難易度を調整したり、ゲーム性を演出したりできます。これらは自然の岩壁にはないメリットです。
 人工のクライミングウォールのそのような特性から、クライミングは競技として成立しやすくなりました。そのため、2000年代には国内でもさまざまなコンペティションが行われるようになり、国体(国民体育大会)でも2008年の大分大会から山岳競技の一種目としてボルダリングが採用されています。

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