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ボルダリングの歴史

ボルダリングとは?
 「ボルダリング」はロッククライミングの一種です。
 ロッククライミングは、歩いて登る登山ではなく、切り立つ岸壁を登ることを意味します。ロッククライミングはさらに、ハーケン、ボルト、ロープなど支点支持具を用いる「エイドクライミング」、それらを用いないか、きわめて補助的にのみ用いる「フリークライミング」に分かれます。
 ボルダリングは、このフリークライミングの一種ということになります。フリークライミングには、落下時の安全対策にロープを用いる(つまり登る動作そのものには使わない)「リードクライミング」や「トップロープクライミング」がありますが、ボルダリングはもともと、それらの練習のためと位置づけられた種目でした。
 ボルダリングでは、通常5メートル以下の低い岩壁を、シューズと滑り止めチョークを用いて登り、ロープは使いません。
 
ロッククライミングの起源
 それでは、ロッククライミングから歴史をたどってみましょう。
 太古より、岩をよじ登った人はたくさんいたでしょうが、現代のものにつながるロッククライミングは1940年代、アメリカのコロラド、ガンクス、ヨセミテではじまりました。
 特にアメリカのカリフォルニア州にあるヨセミテは、氷河が造りだした壮大な渓谷で、その東側には500~1,000メートルほどもある花崗岩の岸壁が連なっており、ロッククライミングには絶好の環境です。そのためロッククライミングの世界的聖地となりました。
 
日本におけるロッククライミング
 日本では、1970年代くらいまでは、国内外の山岳の岩壁を、ハーケンやボルトを打ち込みつつ登る、前述のエイドクライミングが中心でした。しかし、自然の岩をできるだけ傷つけずに、最低限の道具でクライミングすべきだとする風潮が起こり、フリークライミングが少しずつ広がっていきました。
 1958年(昭和33年)に、山と渓谷社からロッククライミング専門誌、『岩と雪』が創刊されます(1995年休刊)。言い換えれば、そのくらいの時期以降になると、ロッククライミングに関心を寄せる人がそれなりにいた、ということです。
 その『岩と雪』が1980年、第72号の表紙に、ある一枚の写真を掲載します。ヨセミテの数ある岩壁の中でも特に有名なMidnight Lightningという大岩を登るJohn Bacherという人物の写真でした。
 短パンをはいただけのジョン・バーカーが、オーバーハング状態の岩壁に、ロープを使わず両手と片足のつま先だけでぶら下がっている姿をとらえたショットで、まるで地球の重力から自由になってふわりと浮いているようにも見えるものでした。
 この写真がもたらしたインパクトは大きく、日本でのボルダリングに対する認知を一気に大きく広げるきっかけになりました。
 
ボルダリングの広がり
 ジョン・バーカーの写真は日本のクライマーたちに刺激を与え、関東では日和田山、鷹取山、三ツ峠、伊豆城山、関西では六甲、京都金毘羅、岡山の王子ヶ岳など、各所の岩壁でフリークライミングルート化が進みました。
 広がっていくフリークライミングの中で、ボルダリングはリードクライミングとならぶ二大潮流のひとつとなっていきます。
 リードクライミングは、クライマー自身が登りながら転落安全対策のロープを確保支点にかけていき、そのロープの反対側の端を地上にいるビレイヤーがしっかり握って確保する、という形の2人1組で行います。
 これに対し、ボルダリングは単独でもでき、アウトドアでは「クラッシュパッド」と呼ばれるクッションを地面に敷くことがありますが、基本的にはシューズと滑り止めチョークだけあれば十分なので、とても手軽に取り組めます。
 この手軽さから、ボルダリングは女性やさまざまな年齢層の人たちにも広く受け容れられていきました。
 
アウトドアからインドアへ
 1980年代後半になると、人工物のグリップポイントを任意の位置に配した人工壁が現れ、ボルダリングはアウトドアからインドアに移り変わっていきました。
 インドアのボルダリングには、天候に左右されないこと、人工グリップポイントは自然のそれよりも安定し安全であること、自由にルートを設定し直せることなど、数々のメリットがあります。そのため、インドアのボルダリングサイトが今や全国に作られています。
 
競技としてのボルダリング
 ルートや難易度をさまざまに設定できる人工壁ボルダリングは、選手間の公平性とゲーム性を容易に確保できますので、まさに競技にうってつけです。日本では、2000年からB-Sessionという年間チャンピオンを選ぶシーズン戦があり、2005年からは年に一度ボルダリング・ジャパンカップが行われています。さらに2008年の大分県国体(国民体育大会)から、山岳競技の一種目としてボルダリングが採用されています。
 
そしてこれから
 すでに述べたように、ボルダリングはたいへん手軽です。そして今や、とても身近なものです。
 未来に向けても、ボルダリングはますます広がっていくことでしょう。
 

 

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